こんにちは、日本画家のAtsukoです。
前回はロンドンでの画家活動~個展につながるきっかけをお話ししましたが、今回は、個展の決定からのお話しをします。
アートスクールの学長との出会い
ある地元のアートフェアで作品を展示していたときのこと。
受賞したのをきっかけに、アートスクールの学長(美しき彫刻家イザベル)に、
「ぜひ私に作品を見せに来て」と声をかけられました。
それから数日後、iPadに簡単なポートフォリオを入れて、学長のいるアートスクールへ。
何点かの画像を見てもらったところ、私のテクニックや世界観を面白がってくださり……その場で展示が決定!
しかも、
* 会場費は無料(販売時のマージンはあり)
* 設営やスクール関係者への広報はスクールのスタッフが対応
* 私が用意するのは作品とDMだけ
という、まるで夢のような条件でした。

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でも私は疑っていた
ただ、このとき私はイギリス生活4年目。
「油断は禁物」と、半信半疑でした。
というのも、イギリスでは「明日行くね」と言ってもその時間はおろかその日中に来てくれない修理業者なんて当たり前。
すべてが日本にくらべてルーズなのです。(私はそのルーズさも結構好きでしたが!)
「やっぱり展示スペース埋まってた、ごめんね〜」なんてことも、十分あり得ると思っていたんです。
そのため、最初の打ち合わせからしばらくは「本当に実現するのかな?」と半信半疑。
でも、2回目の打ち合わせでスケジュールも詳細もきっちり決まり、またイザベルの話しぶりから、「これは本当にやるんだ!」と確信できました。
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目標は「販売」もしてみること
ちょうどこの頃、自宅ではすでに40点ほどの作品を描き溜めていたので、展示数はクリア。
そして私はもう一つの目標を決めました。それは
**「作品を販売してみること」**
それまで私の展示はすべて「発表」が目的。
販売を前提にしたことはなかったのです。
というのも前回のエピソードにありましたが、以前絵を展示したときに、全く予期せぬタイミングで作品をお買い求めいただいたことがあったのです。
「イギリス人は、無名のアーティストからでも作品を買ってくれる」という直感を信じてみることにしました。
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準備①:広報活動
宣伝について。
知り合いだけでなく、地元の団体やお店にもアプローチしました。
* DMを制作➡近隣のお店などに置かせてもらう
* 脈のありそうな団体などにメール
* 近隣の住宅にポスティング
この中で一番の成果は、地元紙「Ham & High」に取材してもらえたこと。
会場スタッフにも「えっ、Ham & Highに載ったの?どうやって?!」と驚かれるほどでした。
しかしこの作業、想像していただけるかと思いますが、結構大変なのです。なぜなら、全てが英語だから!
それまでに自分なりに勉強をして、日常生活は出来る程度にはなっていましたが、何せ仕事で英語を使うというのはまた別のレベル。
英語の先生に、表に出す文章は全部添削をしてもらい、やっと送ることができるのです。(英語を勉強するならオンラインがおススメですよ笑)
今ならAIを使って翻訳してもらえば一発なのでしょうが… 作品の説明などはどうしても自分で選んだ言葉がよい気がしてしまって。また英語の勉強になりました~。
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準備②:小作品を充実させる
もうひとつのポイントは、『小さめで価格も手に取りやすい作品を多めに用意すること』。
絵の先輩から「初めての人に買ってもらいやすいよ」とアドバイスをもらったことを実行してみることにしました。
もちろん、公募展用に制作していた大きな作品が展示のメインではありましたが、個展が決まってからの数か月は、小作品の制作に力を入れました。
作風も、自宅に飾ってみたいと思えるような花の絵など中心に。

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準備③:額装も自分で
次に大変だったのが『額装作業』。
当時は水彩画が中心で、作品の多くが画用紙のまま。
以前の公募展用にオーダーしていた額に加えて、
* 既製品のフレーム
* アンティークマーケットで集めたお気に入りの額
なども使い、自分で補修・リペアしながら額装。
気づけば、ちょっとした「額縁職人」になっていました。
イギリスでは古いものが割安なので、アンティークの額縁はコスト削減にもなり助かりました。
そして、イギリス人はとにかく古いものが好きで、大切にするということも知っていたので、たとえギャラリーで販売するものでも、これはアリということは十分考えられました。
手間は何倍もかかっていますが(笑)。
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日本画作品もロンドンへ
そしてもうひとつのチャレンジが、日本にある『日本画作品をロンドンへ送ってもらうこと』。
せっかく自分でプロデュースする展示。
やはり日本画も加えたいと思い、実家にある作品を家族に頼んで国際便で送ってもらいました。
これでロンドンで描いた水彩画と、日本画作品の両方を展示できることに。
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怒涛の4か月が過ぎて
こうして、展示までの約4か月は、あっという間に過ぎていきました。
描く・準備する・広報する・額装する……
毎日バタバタしながらも、確実に「自分の個展」が形になっていく喜びを感じていた時期でもあります。
個展というのは、作品ラインナップはもとより、額などにもこだわって、自分の世界観を表現していける場。「参加する」形のグループ展などと比べ、格別な楽しさがあるのです。
次回からは、いよいよ開催された個展当日からの様子をお伝えしていきます。
どうぞお楽しみに!