日本画において、水張りは必須の作業です。
水張りの目的は、紙に水を使って描くときに
紙がたわんででしまうのを防ぐことです。
水張りをすることで、最初から最後まで、ピン!と平らな紙に
制作することができるのです。
また、水彩画を描いていても
水を使って紙が波打ってしまうことを防げるので
これまた必須のプロセスでしょう。
慣れると手軽にできますが、
失敗するとちょっと見た目が残念なことになってしまうので
ポイントを押さえて、綺麗に水張りできるようになりましょう!
水張りの仕組み
絵の具で描くと、紙が波打つことから分かるように
紙に水を吸わせると紙が伸びます。
その状態でパネルに張り込む。
乾いたら、紙が縮む。
紙の表面がピンと張られる。
描くときに水を使っても、乾いたらまた元通りに張ってくれる。
水張りとは、こんな仕組みになっています。
下張りについて
これについて、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
そのまま水張りをすると、木製パネルの成分が
和紙に染み出てしまうことがあるので、
作品を長期保存したい方は
何らかの対策をすることをお勧めします。
(とりあえずパッと描きたい!という方は
省略してもよいですが、
手作業の要らない下張り済みパネルを買うのもおすすめです。)
水張りに必要なもの
![水張りの準備](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/03/img_8864.jpg)
- 紙
- シナベニヤパネル
- 糊(ヤマト糊のような、指で伸ばせるもの)
- 筆洗(刷毛を濡らせればなんでもよい)
- 刷毛(清潔なスポンジでも。)
- カッター
水張りのやり方
和紙を切る
![側面まで覆える大きさに和紙を切る](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/03/img_8857.jpg)
和紙を、パネルより一回り大きいサイズに切ります。
10号くらいまでの小さめの作品であれば
パネル表面+側面と、ちょっと余るくらい
にしておくと安心でしょう。
大きな作品の場合、
裏まですっぽり回り込む大きさに
和紙を切ります。
(表面+側面+パネルの角材の厚み分)
ちょと細かいですが、パネルの角を
やすりで軽くこすっておくと、
紙への負担が和らぐでしょう。
![パネルの角をやする](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/03/img_8855.jpg)
パネル側面に糊を塗る(1回目)
ポイントは、糊も水も2回ずつです!
1回目の糊は捨て糊といい、
パネルの木に吸わせてしまう目的で塗ります。
次に和紙を濡らし、紙に水を吸わせている間に
もう一度糊をつけて、これできちんと接着します。
パネル側面に糊を塗ります。
のりは指で伸ばします。
パネルの厚みの半分くらい(裏側のほう)につけるようにしましょう。
これは、作品を剝がすときに
端まできれいに剥がせるためです。
絵のギリギリまで糊を塗ってしまうと
絵の端がパネルに張り付いて
剥がすときに紙の縁がきれいにいきません。
和紙を濡らす(1回目)
![紙に水を引く](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/04/img_8862.jpg)
和紙に、刷毛でたっぷりの水を引き
紙の裏面を濡らします。
和紙であれば、ザラザラしている面が裏です。
細かいことを言えば、水を伸ばす順番は
刷毛を紙の中心から動かし、
英国のユニオンジャックのように水を伸ばす
→隙間を濡っていく
となります。
大きな和紙では特に、
紙を濡らしたところからどんどん伸びて・たわんでいくので
この方がきれいに濡らせるからです。
和紙は水を吸い込んで、表面がすぐに乾いてきてしまうので
何度か水を引くとよいでしょう。
パネルに糊を塗る(2回目)
先ほど捨て糊をした上から、もう一度糊を塗ります。
糊がパネルに吸われるなどして
乾いてしまったところを中心に
塗っていきます。
紙を濡らす(2回目)→パネルに乗せる
![パネルを乗せる](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/03/img_8953-1.jpg)
いよいよ紙をパネルに乗せます。
紙が水を吸って、乾いてきているでしょうから、
再度素早く水を引いてからです。
特に紙の端はすぐに乾くので要チェックです。
濡らした紙の上から、(裏面のまま)
左右の空きがおよそ同じになるように
そっとパネルを乗せて
それを裏返すといい位置にできるでしょう。
パネル側面を押さえて貼る
![空気を押し出すように、軽く押さえる](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/03/img_8954-1.jpg)
すぐに表返します。
必要であれば、清潔な布などを使って
和紙表面の空気を中心から押し出すようにします。
![側面を貼る](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/03/img_8955-1.jpg)
そのまま側面に和紙を押さえ込んで貼ります。
細かいことをいえば、パネルの長辺→短辺の順で貼ります。
角を折りこむ【ポイント!!】
![角が最大のポイント](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/04/img_8868.jpg)
これが水張りでいちばんのポイントです!
角を折りこむ際、
水平方向に少し引っ張りながら
貼ります。
角の両方向を均一な力で引っ張るのが大事です。
このとき、
対角線方向に引っ張ったり、
2方向のどちらかの引っ張る力が強かったりすると
乾いたときに、しわができてしまいます。
これを「紙がつる」といい、
制作の最後まで悪目立ちしてしまうので、
極力避けられるように頑張りましょう。
この後は乾かすだけですが、
できれば時々目をやって、もし角がつりそうなら
すぐにそこを濡らしてパネルから剥がし、ちょっと引っ張りなおす
ということもできます。
ぴょこんと出ている、角の余の紙は(写真青線の部分)
乾燥後に、はさみで切ってしまって大丈夫です。
大きい作品の場合は
和紙を裏まで回しこみ、画鋲で止めて水張りをする場合もあります。
これは、パネルを再利用するつもりのときに
剥がすのが楽だからですね。
また、紙を画鋲でしっかり止めるので
剥がれてしまう、ということもありません。
乾かす―完成!
パネルを水平に置いて乾かします。
綺麗に張れたパネルは、とても清々しくて気持ちがいいです。
仮張りのやり方
![仮張り](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/04/img_9342.jpg)
仮張りは、水張りの簡単バージョン。
平らな板に紙を張ります。
小さめの作品ならこれもありです。
水張りと比べて失敗しにくく手軽にできます。
水張りのよさは、パネル側面まできれいな和紙なので
作品が完成した後にそのまま飾れる点
大きな作品でもしっかり張れる点(ニカワの引っ張りにも強い)
にあるかと思います。
ですから、小さな作品で、
完成したらデッサン額や水彩額に入れて飾るような場合は
仮張りでも大丈夫でしょう。
紙を切る
紙のサイズは、完成サイズ+2cmくらいあればよいでしょう。
完成サイズの線を薄く引いておく
この線に沿ってテープを貼るので、忘れないように…
板に、濡らして伸ばした紙を乗せる
紙を伸ばす時間があるので
濡らしてから2,3分待ち
直前に再度濡らしてから紙を乗せましょう。
紙の縁を水張りテープで貼る
刷毛やスポンジなどを使い、筆洗の縁でテープに水をつけます。
すぐに粘着力が出るので
先ほど引いた線に合わせて板に貼ります。
乾いたら、制作OKです。
さいごに
水張りは、日本画・水彩画に必須の作業です。
何度かやると慣れてくるので、
失敗なくできるようになりたいですね!
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