日本画 水張り・仮張りのやり方【失敗を防ぐコツを知ろう】

こんにちは、画家の atsuko です。アートで暮らしを豊かにするヒントについて書いています。
日本画作品(一部)

日本画作品(一部)

角が最大のポイント 日本画
角が最大のポイント

日本画において、水張りは必須の作業です。

水張りの目的は、紙に水を使って描くときに
紙がたわんででしまうのを防ぐことです。

水張りをすることで、最初から最後まで、ピン!と平らな紙に
制作することができるのです。

また、水彩画を描いていても
水を使って紙が波打ってしまうことを防げるので
これまた必須のプロセスでしょう。

慣れると手軽にできますが、
失敗するとちょっと見た目が残念なことになってしまうので

ポイントを押さえて、綺麗に水張りできるようになりましょう!

水張りの仕組み

絵の具で描くと、紙が波打つことから分かるように
紙に水を吸わせると紙が伸びます。

その状態でパネルに張り込む。

乾いたら、紙が縮む。

紙の表面がピンと張られる。

描くときに水を使っても、乾いたらまた元通りに張ってくれる。

水張りとは、こんな仕組みになっています。

下張りについて

これについて、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

そのまま水張りをすると、木製パネルの成分が
和紙に染み出てしまうことがあるので、

作品を長期保存したい方は
何らかの対策をすることをお勧めします。

(とりあえずパッと描きたい!という方は
省略してもよいですが、
手作業の要らない下張り済みパネルを買うのもおすすめです。)

水張りに必要なもの

水張りの準備
水張りの準備
  • シナベニヤパネル
  • 糊(ヤマト糊のような、指で伸ばせるもの)
  • 筆洗(刷毛を濡らせればなんでもよい)
  • 刷毛(清潔なスポンジでも。)
  • カッター

水張りのやり方

和紙を切る

側面まで覆える大きさに和紙を切る
側面まで覆える大きさに和紙を切る

和紙を、パネルより一回り大きいサイズに切ります。

10号くらいまでの小さめの作品であれば
パネル表面+側面と、ちょっと余るくらい
にしておくと安心でしょう。

大きな作品の場合、
裏まですっぽり回り込む大きさに
和紙を切ります。
(表面+側面+パネルの角材の厚み分)

ちょと細かいですが、パネルの角を
やすりで軽くこすっておくと、

紙への負担が和らぐでしょう。

パネルの角をやする
パネルの角をやする

パネル側面に糊を塗る(1回目)

ポイントは、糊も水も2回ずつです!

1回目の糊は捨て糊といい、
パネルの木に吸わせてしまう目的で塗ります。

次に和紙を濡らし、紙に水を吸わせている間に
もう一度糊をつけて、これできちんと接着します。

パネル側面に糊を塗ります。
のりは指で伸ばします。

パネルの厚みの半分くらい(裏側のほう)につけるようにしましょう。

これは、作品を剝がすときに
端まできれいに剥がせるためです。

絵のギリギリまで糊を塗ってしまうと
絵の端がパネルに張り付いて
剥がすときに紙の縁がきれいにいきません。

和紙を濡らす(1回目)

紙に水を引く
紙に水を引く

和紙に、刷毛でたっぷりの水を引き
紙の裏面を濡らします。

和紙であれば、ザラザラしている面が裏です。

細かいことを言えば、水を伸ばす順番は

刷毛を紙の中心から動かし、
英国のユニオンジャックのように水を伸ばす
→隙間を濡っていく

となります。

大きな和紙では特に、
紙を濡らしたところからどんどん伸びて・たわんでいくので
この方がきれいに濡らせるからです。

和紙は水を吸い込んで、表面がすぐに乾いてきてしまうので
何度か水を引くとよいでしょう。

パネルに糊を塗る(2回目)

先ほど捨て糊をした上から、もう一度糊を塗ります。

糊がパネルに吸われるなどして
乾いてしまったところを中心に
塗っていきます。

紙を濡らす(2回目)→パネルに乗せる

パネルを乗せる
パネルを乗せる

いよいよ紙をパネルに乗せます。

紙が水を吸って、乾いてきているでしょうから、
再度素早く水を引いてからです。

特に紙の端はすぐに乾くので要チェックです。

濡らした紙の上から、(裏面のまま)

左右の空きがおよそ同じになるように
そっとパネルを乗せて
それを裏返すといい位置にできるでしょう。

パネル側面を押さえて貼る

空気を押し出すように、軽く押さえる
空気を押し出すように、軽く押さえる

すぐに表返します。

必要であれば、清潔な布などを使って
和紙表面の空気を中心から押し出すようにします。

側面を貼る
側面を貼る

そのまま側面に和紙を押さえ込んで貼ります。

細かいことをいえば、パネルの長辺→短辺の順で貼ります。

角を折りこむ【ポイント!!】

角が最大のポイント
角が最大のポイント

これが水張りでいちばんのポイントです!

角を折りこむ際、
水平方向に少し引っ張りながら
貼ります。

角の両方向を均一な力で引っ張るのが大事です。

このとき、
対角線方向に引っ張ったり、
2方向のどちらかの引っ張る力が強かったりすると

乾いたときに、しわができてしまいます。

これを「紙がつる」といい、
制作の最後まで悪目立ちしてしまうので、
極力避けられるように頑張りましょう。

この後は乾かすだけですが、

できれば時々目をやって、もし角がつりそうなら
すぐにそこを濡らしてパネルから剥がし、ちょっと引っ張りなおす
ということもできます。

ぴょこんと出ている、角の余の紙は(写真青線の部分)
乾燥後に、はさみで切ってしまって大丈夫です。

大きい作品の場合は

和紙を裏まで回しこみ、画鋲で止めて水張りをする場合もあります。

これは、パネルを再利用するつもりのときに
剥がすのが楽だからですね。

また、紙を画鋲でしっかり止めるので
剥がれてしまう、ということもありません。

乾かす―完成!

パネルを水平に置いて乾かします。

綺麗に張れたパネルは、とても清々しくて気持ちがいいです。

仮張りのやり方

仮張り
仮張り

仮張りは、水張りの簡単バージョン。

平らな板に紙を張ります。
小さめの作品ならこれもありです。

水張りと比べて失敗しにくく手軽にできます。

水張りのよさは、パネル側面まできれいな和紙なので
作品が完成した後にそのまま飾れる点

大きな作品でもしっかり張れる点(ニカワの引っ張りにも強い)
にあるかと思います。

ですから、小さな作品で、
完成したらデッサン額や水彩額に入れて飾るような場合は
仮張りでも大丈夫でしょう。

紙を切る

紙のサイズは、完成サイズ+2cmくらいあればよいでしょう。

完成サイズの線を薄く引いておく

この線に沿ってテープを貼るので、忘れないように…

板に、濡らして伸ばした紙を乗せる

紙を伸ばす時間があるので
濡らしてから2,3分待ち

直前に再度濡らしてから紙を乗せましょう。

紙の縁を水張りテープで貼る

刷毛やスポンジなどを使い、筆洗の縁でテープに水をつけます。

すぐに粘着力が出るので
先ほど引いた線に合わせて板に貼ります。

乾いたら、制作OKです。

さいごに

水張りは、日本画・水彩画に必須の作業です。

何度かやると慣れてくるので、

失敗なくできるようになりたいですね!

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