日本画 パネルに下張りをするやり方 【代用方法もあります】

こんにちは、画家の atsuko です。アートで暮らしを豊かにするヒントについて書いています。
日本画作品(一部)

日本画作品(一部)

下張り紙を乗せて、空気を抜く 日本画
下張り紙を乗せて、空気を抜く

日本画パネルのアク止めに、下張りをする方法。

日本画を描くとき、
パネルに水張りをする場合がほとんどかと思いますが

水張りの前に
下張り という作業をすることがあります。

これは、ベニヤ板の成分が
張った和紙の裏に染み出すのを防ぐために行います。

このやり方や、他の方法もご紹介したいと思います。

買ったばかりのパネルは、
ベニヤ板の表面に塗装成分などが残っています。

そのまま水張りをして
上から水を使って絵を描くと
この色々な成分が和紙に染み出してしまうのですね。

水張りをはがすと、この色が和紙の裏に
ついているが分かります。

これは絵の保存という観点からよくないですし、
薄い紙に描く場合には、表面にも出てきてしまう可能性があります。

以前DIYで木工作をしたときに、

塗装の工程で、表面をスベスベにするめ
ニスに 「との粉」 (成分は石の粉だそうです)を混ぜて
塗ったことがありました。

パネルの表面にニスは塗られていませんが
きっとそのような工程が、パネルづくりにもあるのかなぁと想像できます。

★合わせて読みたい:日本画の制作。初めから終わりまで

★この後のプロセス:水張りのやり方

日本画パネルの下張り 【用意するもの】

絵皿に溶いた糊を塗っている
絵皿に溶いた糊を塗っている
  • パネル
  • 古タオルなど汚れていい布
  • 新鳥の子紙や、画用紙など
  • のり
  • 刷毛

下張用の紙

紙は、薄手の画用紙や
新鳥の子紙(パルプが成分)など、
安価な紙で大丈夫です。

何せ、木のアクを吸わせるだけなので。

パネルより、少し大きめに切っておきます。

のり

ヤマトのりのようなもので大丈夫です。
絵皿などに、適当な濃さに溶きます。

水とよく混ぜて、刷毛で何とか
塗れるくらいにしておきます。

刷毛(はけ)

水刷毛でもいいのかもですが、
のりを塗るにはちょっと柔らかすぎるので

私は家に合った、ペンキ用の安価な刷毛だったり、
版画用のぼかし刷毛だったりを使うことがあります。

用具のそろっている方は糊刷毛を使えばいいと思いますが
なければ、糊が伸ばせる適当な刷毛を選んでください。

日本画パネルの下張り① 【パネルの表面を水拭き】

パネルの表面は
生のきれいな木のように見えても

水拭きをすると、布に結構色がつきます。

それは、初めに書いたような
「との粉」のようなものなのかな?と思います。

下張りをするので神経質にならなくていいですが、
ざっと、濃い色がつかなくなるまで拭くといいでしょう。

日本画パネルの下張り② 【パネルに糊を塗る】

パネルに糊を塗ったところ
パネルに糊を塗ったところ

まずは水刷毛などを使い、パネルの表面を軽く濡らします。
塗れた雑巾で拭いてもいいです。

いきなり糊を塗ると、木が水分を吸ってしまって
うまく接着しないようです。

それから、溶いておいた糊を塗ります。

染み込んだり、乾いたりしてしまうようなら
何度か刷毛を往復させて、少したっぷりめに塗ります。

日本画パネルの下張り③ 【紙を乗せる】

下張り紙を乗せて、空気を抜く
下張り紙を乗せて、空気を抜く

下張り紙を乗せて、空気を抜くようにして
パネルの端までぴったりくっつけます。

きれいな布などを使い、表面を軽くなでて
空気を押し出すとよいです。

そのまま乾かす。

日本画パネルの下張り④ 【余計な紙を切る】

余った紙を切る
余った紙を切る

乾いたら、はみ出た下張り紙をカッターで切ります。

完成!

上から普通に水張りができます。

また、下張りをしたパネルに水張りをすると、
分厚い雲肌麻紙であっても、
表面が一段明るい白に見えます。

下張りをしたことで、こんな効果もあるのだなと。
おもしろいですね。

下張りがちょっと手間だな…という場合の代用方法

そうですよね。日本画は、描く前の色々な準備が本当に手間で、、
ちょっとでも省いて、早く描きたい。

下張り+水張り済のパネルも日本画材屋さんにありますが、
これは職人仕事だけあって、かなりお値段が張ります。

しかし!なんと下張りだけ済みのパネルが、あるのですね。

下張り済のパネルを買う

なんと。下張り済みの木製パネルがあります!
ほんの少し割高ですが、この程度の価格差です。

F6号で 下張り済:1235円 下張り無し:1177円 (執筆時現在)

私も最近はこれを使わせていただいています。

アマゾンの商品ページに、パネルづくりの工程ビデオがあり
ちょっと面白いのでおすすめです。

マルオカ工業さんの下張りパネルはこちら
Amazonにもショップがあります

アクリルジェッソを塗る

ジェッソ
ジェッソ

下張りの代わりに、
アクリルジェッソを塗ることもできます。

ペンキのようにどんどん塗って乾かすだけなので、
簡単。失敗無し。

というのがメリットです。

デメリットは
割高になること。

また、私もこの方法を試したときは、

描いたときに、紙の裏の水の吸い込みが少なくなるので、
ちょっと描く感じが変わるなぁと思いました。

けれど、ジェッソは私の先生も使っている方法なので
特に心配はありません。

さいごに

日本画制作をしていると、
こんなに細部に気を遣い、
こんなに手間をかけるのか…と

驚かされることしばしばです。

私も、水彩画や油絵を少し描いていたときとの差に
最初はびっくりしました。

水彩画や油絵では、わりと「すぐに」
絵の具での工程に取り掛かれますよね。

日本画の世界では、

絵の支持体(紙や絹)の部分から、
伝統的な方法が今でも
残っている部分が多くあります。

(「パネル」に関しては、近代からのものでしょうが、
支持体の保存状態に気を遣うという意味で…)

先人たちは、自然の材料で
受け継がれてきた知恵を使い

いかに作品を鮮やかに描き
長く保存できるか
試行錯誤してきたのですね。

そのおかげで、
世界の保存修復にいかされるなど

日本画の材料・技術が
現代でも最高峰とされる場合があります。

日本画制作は、そういった部分に
常に触れて、学ぶことができる。

そういった意味でも
とても興味深い材料だなと
こんなときに思わせてくれます。

★合わせて読みたい:日本画の制作。初めから終わりまで

★この後の工程について知ろう:水張りのやり方

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