日本画の技法一覧
日本画の特徴は、日本古来の
独特な材料を使うことです。
墨、岩絵の具や、箔など
これを使い、和紙の上に描いていきます。
日本画の画材について詳しく
日本画の基本的な描き方の流れについて
材料が複雑なので、技法も様々。
このページでは、数ある技法を1ページにまとめてみました。
制作の参考に、また
鑑賞の助けになるといいなと思います。
日本画の技法① 【筆を使って描く】
たらしこみ
![尾形乾山 蔦紅葉図 1732年以降 The Met Collection](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/kenzan1-1024x768.jpg)
水を先に引き、その上からたっぷりの絵の具を乗せ
水と絵の具のにじみを生む。
または、絵の具を置いた後に、濃度の違う絵の具を後から乗せて、
にじみもようを生む。
琳派の画家に顕著にみられる技法です。
ぼかし
![葛飾北斎 軍鶏図 1838年 The Met Collection](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/hokusai-1024x768.jpg)
絵の具を置いたら、その周囲を別の筆で広げてぼかす。
この作品では、鶏の羽に美しいぼかしが
多様されていますね。
絵の具を置く前に紙を湿らせておく/
ぼかす筆に水をつける/つけない など
やり方により効果も様々。
重ね塗り
薄い色を下の色の上に置き、色の重なりをつくる。
または、濃い絵の具で不透明風に重ねる。
日本画は粒子の大きさの違いを
いかして制作していくので、
一番奥深く、探求の尽きない部分といえそうです。
上から掛ける
![背景に広い面積の重色をしている](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8308-e1707031679594-300x219.jpg)
重色の一部ともいえますが、
部分的または全体に、
薄い絵の具を掛ける。
色調や明度を整えたり、
胡粉を掛けて霧がかった雰囲気を出したりと、
用途は様々。
胡粉下地を塗る
![部分的な下地塗りで描き起こす](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8314-225x300.jpg)
ここでは、制作の初めに塗っておく
全体の下地ではなく、
部分的に描き起こす場合の下地を紹介します。
画面にある程度の下地を塗ってしまうと、
花や人物などをその上に描くときに
明度、彩度が下がってしまいます。
そこで、上から描きたい部分に
胡粉下地を塗り、
その上から鮮やかな絵の具を乗せると
きれいに発色してくれます。
胡粉下地を塗った部分は
周囲の画面から一段浮き出てくれるので、
奥行き感も表現することができます。
ためぬり
含みの良い筆にたっぷりの絵の具をつけて
形に絵の具をためるように塗ります。
日本画の技法② 【マチエールをつくる】
マチエール、いわゆる絵肌をつくる方法。
画面全体に、または部分的に
ボコボコ・ザラザラさせたり、盛り上げたりと
表現の幅が広がります。
絵画において、マチエールはとても大事ですね。
写真では伝わりづらい
手書きの絵画だからこそできる、
感性に訴える部分だからです。
私も、マチエールがしっくりきてこそ、
作品がうまく表現できたなと感じます。
盛り上げ
![周囲より盛り上がった部分をつくる](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8306.jpg)
上の写真でいうと、赤い花の上の青い部分です。
白系の絵の具で盛り上げて、青系の絵の具を掛け、
紙やすりで軽く研ぎ出しをしています。
盛り上げ技法は、
盛り上げ胡粉や白土(はくど)などを使い、
紙の上に盛り上がりをつくります。
その凹凸をマチエールにしたり、
形態を強調させることができます。
古くは、腐れ胡粉をつくって盛り上げるなど
大変な手間を掛けて行われていた方法ですが、
現代では割れにくい膠を使ったり、
また保水性のある白土を使ったりと
材料を工夫することで、
もっと手軽に出来るでしょう。
流す
![絵の具を流す](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8312.jpg)
この作品では、赤茶色の粗めの絵の具を、
白っぽい画面の上から流しています。
水分の多い絵の具を画面の上から塗り、
画面を立てる・斜めにすることで
絵の具を流す効果をつくります。
絵の具の粗さや、
画面を立てる時間
(数秒〜数分まで)により、
かなり様々な効果が出来ます。
絵の具を流しながら上から水を引く
一度流して乾かした後、二重に流す
などのやり方もあります。
![絵の具流し](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8313.jpg)
海綿
![海綿のテクスチャー](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8310.jpg)
画材店で売られている海綿に絵の具をつけ、
タンポ/スタンプの要領で絵の具を画面につけます。
海綿の穴の空き具合、密度により模様が変わり
独特なマチエールとして使うことができます。
海綿は濡らしてフワフワにし、
水気をよく絞って
絵の具をつけましょう。
同じことが、食器洗いのスポンジや
ガーゼの手作りタンポなどでも出来ます。
スポンジでは、スポンジの形の角が出やすいなど
それぞれの特徴があるので、
自分の作りたい雰囲気に合わせて
やってみてください。
ラップ
絵の具を塗り、乾かないうちに
ラップを掛ける。
剥がすと、しわしわの模様がつきます。
もみ紙
![揉み紙にききょう](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/01/IMG_7842-768x1024.jpeg)
和紙を揉(も)んで
シワをつけたり、
絵の具を二重に塗って
揉むことで、
上の層の絵の具を剥がした模様をつける
といった技法。
ぐっと和の雰囲気が出せます。
やり方について、詳しくはこちらで解説しています。
紙を重ねる
![紙を重ねる](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8317-edited.jpg)
![紙を重ねる2](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8318-edited.jpg)
本紙の上から、別の紙を貼ることができます。
コラージュのような感じともいえます。
質感に大きな変化をもたらしたり、
薄紙の下の色や描写を透かしたりと
面白い表現ができそうです。
日本画の技法③ 【墨の表現】
それぞれの技法は絵の具と似ていますが、
墨の細かな粒子により、効果が顕著に出せるという特徴があります。
![渡辺始興 山水屏風図 18世紀前半 The Met Collection](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/shiko-1024x930.jpg)
濃淡で描く
いうまでもなく、墨は濃淡をつけて表現できます。
雪舟が、墨の濃淡をいかして
独特の水墨画法をつくりあげたことが
有名ですね。
かすれ
筆に含ませる墨の量を少なくして、
かすれ模様をつくれます。
にじみ
先に紙に水を引いておき
上から墨を載せることで
滲み模様ができます。
たらし込み
![俵屋宗達工房 子犬図 17世紀前半 The Met Collection](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/sotatsu-589x1024.jpg)
にじみと同様の方法で、
水の上から墨をのせて
自然の滲み模様をつくります。
形態の中にこの模様をつくることが
たらし込みとよく言われ、
琳派の画家が多様しています。
墨流し
![墨流しを背景に](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/img_8319-edited.jpg)
水を張った容器に墨を流し、
その模様を紙に写し取ります。
西洋のマーブリングと同様の方法。
にじみのある紙で
にじみのある紙で
日本画制作をするとき、
ドーサ引きという滲み止めをしてある紙を使うことが多いですが、
最初はドーサなし(生という)の紙に
墨のにじみをつくっておき、
その後ドーサを自分で引くことで、
滲み模様の上から絵の具で描くということができます。
ちなみに、ドーサを引かないと
岩絵具はのりませんので、
岩絵具の制作には
ドーサ引きは必須となります。
日本画の技法④ 【箔の技法】
![狩野山雪 老梅図襖 1946年 The Met Collection](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/sensetsu-1024x395.jpg)
金箔や、銀箔は
絵画に華やかさをもたらしてくれます。
箔には金銀以外の種類や
独特の使い方が様々にあり、
- 平押し
- 砂子
- 切金
- 盛り上げなど、
それぞれの特徴をいかし、和の雰囲気を出す事もできます。
詳しくはこちらで解説しています。
日本画の技法③ 【墨線にまつわる技法】
鉤勒こうろくほう
![尾形乾山 水際椿図 1741年
The Met Collection](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/kenzan2-1024x814.jpg)
線描き用の筆を使い、輪郭線を引く方法。
この作品では、椿の部分がそうです。
地面には、琳派の作品らしく「たらしこみ」が使われていますね。
没骨法
![酒井抱一 柿図屏風 1816年 The Met Collection](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/kiitsu-1-1005x1024.jpg)
輪郭線を描かず、
抑揚のつく筆の筆跡や
墨/絵の具の濃淡で直接形態を描いていく方法。
この作品では、柿の葉が分かりやすいです。
木の幹や地面の部分にも、
墨線での輪郭は引いていないようです。
付け立て
![円山応挙 (1733–1795) 応挙画譜より](https://atsukosnakashima.com/wp-content/uploads/2024/02/okyo-gafu-1024x684.jpg)
付け立て筆などを用い、
筆の抑揚で描く方法。
日本画の技法 【おわりに】
これだけ様々な技法のある日本画の世界。
次はどれを使って描こうかな!と
ワクワクしてしまいますね。
ご質問があれば、遠慮なく
専用メールアドレスよりお問い合わせください。
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