アール・ヌーボーの特徴とは。日本美術の影響をみる

こんにちは、画家の atsuko です。アートで暮らしを豊かにするヒントについて書いています。
日本画作品(一部)

日本画作品(一部)

ロートレック作品 アート
ロートレック作品

アール・ヌーボーの特徴とは?

アール・ヌーボーの特徴とは、自然(植物・動物)の形をもとにした
曲線的・装飾的なデザインです。

アール・ヌーボー様式の作品には
様々な分野があります。

それぞれの分野で有名なアーティストは

  • ポスター【ミュシャ/ロートレック】
  • ガラス工芸品【ガレ/ラリック 】
  • 絵画【クリムト】
  • 建築【ガウディ】

などです。

そしてこのデザインの
大きなインスピレーションになったのが
遠い日本の美術といわれています。

身近な動植物を描く
日本の「琳派」
のデザインや、

浮世絵の表現が
ヨーロッパの人々に影響を与えたのです。

この記事では、

  • なぜ、日本の美術がヨーロッパに影響を与えたの?
  • このアール・ヌーボーがうまれた時代や、
  • アール・ヌーボーの特徴

などを、画家の目線でわかりやすくご紹介します!

アール・ヌーボーの時代背景

日本が開国したのが1854年

それから日本の浮世絵や工芸品が
ヨーロッパに大量に輸出
されます。

1857年頃から、パリに
日本の美術工芸品を売る店が次々とオープン

ヨーロッパ各地で開かれた万国博覧会では、
日本も公式・非公式に参加し

日本の品々は多くの人目に触れ
人気を博しました。

  • 1862年 ロンドン万国博覧会
  • 1873年 ウィーン万国博覧会
  • 1878年 パリ万国博覧会

特にパリでは、

浮世絵の展覧会が開催
東洋美術館がオープン
イベントの景品でうちわが配られる など

日本風=「ジャポネズリー」は
一大ブームになったのです。

日本の品々や

それを模したスタイルのジャポネズリー商品は
一般の人々にも広まりましたが、

画家や美術評論家などの美術・芸術関係者もまた
日本の美術様式を研究し、

ジャポニズム」として
自らの芸術に取り入れていきます。

1890年代頃~

パリなどを中心にヨーロッパで一大ブームを巻き起こした
芸術運動「アール・ヌーボー」も、

それに先立つ「ジャポニズム」ブームの
真っただ中に生きたアーティスト達によるものですから、

日本美術のの影響を大いに受けているのです。

アール・ヌーボーの特徴と、日本の影響

【フランス】

  • エミール・ガレ(ガラス工芸)
  • トゥールーズ・ロートレック(画家)
  • アルフォンス・ミュシャ(画家・デザイナー・チェコ出身)

【オーストリア】

  • グスタフ・クリムト(画家)

【イギリス】

  • リバティ(布地製品や家具)

【スペイン】

  • ガウディ(建築家)

エミール・ガレ

(1枚目)

エミール・ガレのガラス作品。

身近な植物が主役というところが
それまでのヨーロッパ美術にはないところ。

(2枚目)

ガレはガラス作品が有名ですが、こんな陶器もつくっていたのですね。
日本のものを模したようなデザイン。

ガレが日本美術を目にし、研究していたことが分かります。

ロートレック

(1枚目)

形を面的にとらえている。
例えば女性の黒い服の、立体感は出していない。
背景もほぼシンプルな線のみ。

このような表現は、日本の浮世絵に通じるところがあります。

(2枚目)

1枚目と同じく、平面的な表現になっている。

また、日本美術を象徴する、も使われている。

また、2枚とも、水平、垂直を無視して
斜めな線の多い、自由な構図

それまでの西洋美術では、厳格な遠近法がルールでしたから、

新しい芸術を模索して、日本風の、ルールにとらわれない
構図を模索していたと思われます。

ミュシャ

Alphonse Mucha - Poster for Victorien Sardou's Gismonda
Alphonse Mucha – Poster for Victorien Sardou’s Gismonda
Four Seasons by Alfons Mucha, circa 1897
Four Seasons by Alfons Mucha, circa 1897

(1枚目)

このタイプの衣装は、日本の着物を参考にしているもののようです。
(この時代を再現する映画・ドラマなどでも、時おり見かけます。)

また、アール・ヌーボーの特徴である

葉や花を多く使ったり、
曲線を多用するデザイン。

それに女性像を組み合わせ、独特のスタイルをつくっているところが

ミュシャの作品の特徴です。

(2枚目)

1枚目と同じく、女性像に、曲線を多用して
エレガントな構成をつくっている作品。

この作品、実はテーマに日本の影響が感じられます。

それは「四季」を植物の変化を通して
表現している
ということです。

日本に住む私たちからすると、何ら珍しいことではありませんが

ヨーロッパに暮らすと、日本の四季は格別美しく、

また、それを芸術の主なテーマとして表していることは
とても日本的なのだと気づかされるのです。

クリムト

画像はWikipedia Commons より

クリムトも、とても個性が際立っているので少し意外ですが

実はアール・ヌーボーの作家の一人と
位置付けることができます。

(細かく言うと、ウィーン分離派などありますが)

時代的にもですし、

伝統的な様式を抜け出し
新たな表現を開拓する中で

曲線をデザイン的に用いる、
また植物の形を多用

といった、アール・ヌーボーの特徴を備えています。

クリムトが金を多用したのは、金細工師であった父の影響
そして、日本美術の金屏風などを見た影響といわれています。

また、デッサンが超上手だったクリムトが、
陰影をつけた立体的な表現でなく

平面的な画面構成をするようになったのも、
日本美術からの影響のようです。

(写真2枚目)

色彩はモノクロ。

ですが、光と影の陰影をほとんどなくし

ミニマリスムといえるような
シンプルで平面的な構成です。

この面的な表現が、日本の浮世絵の影響といわれます。

(写真3枚目)

もう少し、ジャポネズリーとシノワズリーの混ざったような

東洋趣味を取り入れた作品。

(写真4枚目)

クリムトが最後に暮らしていた家の一部屋だそうです。

これを見れば、クリムトがいかに東洋美術に興味を持ち、
愛好していたかが一目瞭然ですね。

リバティ

アール・ヌーヴォーの波は、イギリスにも。

リバティ・プリントで知られている
リバティ百貨店は、当初は

東洋からの品や、シノワズリー、
ジャポネズリーの布・布製品などを売る総合商店でした。

同時に、アール・ヌーボー様式デザインの
布や商品もオリジナルでつくり、人気を博していたようです。

今でも、リバティの象徴として、

アール・ヌーヴォー調のデザインのスカーフやバッグ
などが人気商品にラインナップされています。

Liberty Iphis Sunset Little Marlborough Canvas Tote Bag | Liberty
The Iphis Sunset collection is crafted from beautifully coloured coated canvas, screen-printed with six hues for a rich ...

町中のアール・ヌーボー建築というと、パリのメトロなどが有名ですが、

お隣のイギリスにも、実はたくさんの
アール・ヌーボー建築がありました。

5 Art Nouveau Buildings in England
Explore some of England’s beautiful Art Nouveau buildings featuring flowing lines and floral designs.

それほどまでに、アール・ヌーボーは
ヨーロッパ各地を席巻したのですね!

ガウディ

誰もが知る、スペインの建築家。

サグラダ・ファミリアの建築で有名です。

このガウディもまた、この時代のアーティストの1人なのです。

スペインには、サグラダ・ファミリア以外にも
ガウディの建築は沢山ありますが、

どれも、動植物などの自然からインスピレーションを得た
曲線をいかしたデザイン
が特徴です。

カサ・ミラ
バルセロナのカサ・ミラ

私はバルセロナのカサミラを訪ねましたが

動物の骨のような柱など、

解説を読むと、ガウディが自然からいかに学んでいたかを知ることがき、
とても興味深かったです。

カサバトリョは、独特なファザードが特徴的ですが
やはり有機的な曲線が多様されています。

カサ・バトリョ
バルセロナのカサ・バトリョ

アール・ヌーボーの特徴 まとめ

アール・ヌーボーは

自然からヒントを得た
曲線的な形
が特徴的です。

そこには、身近な動植物を描いて
季節の移り変わりを愛でた

日本の美術の影響がありました。

この時代の芸術作品を見るとき、

絵、工芸、建築 いろいろな分野で
このつながりをぜひ感じてみてください!

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