日本画を始めるときに、これだけは揃えよう!というものを、
具体的な商品とともにご紹介します。
日本画の画材は扱いがすこし複雑で、
人により材料の使い方が変わってきたりするので
絶対ということはありません。
各材料のメーカーも、画材屋さん店によって扱っているものが違うので、
まず始めるのであれば、そのとき手に入りやすいもので大丈夫ですが、
選べるならコレ、というものをご紹介するリストとなっています。
大体のものについて、おすすめのサイズまで選んであるので、参考にしてみてください!
また、もう少し一つ一つについて、詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
初めての日本画材① 絵の具
岩絵の具 【必要度★★★★★】
日本画で使う基本の絵の具です。
天然の材料や、人口の材料のものがあり、1色あたりの値段も様々です。
絵の具屋さんに、色々な基本色セットがあります。
例えば、ウエマツさんのこちら
上のセットは「天然絵の具」=天然
下のセットは人口の「新岩絵の具」=人口 です。
どちらも粒子の細かさは同じで、9番に揃えてあるので、混色もしやすい。
この組み合わせで、天然と新岩絵の具の違いを感じながら描いてみるのもよいかも。
もう少し大きなセットでこんなのも。
(こちら三吉さんですが、ウエマツさんにも同じようなものアリ)
このセットの特色は、
同色で、番手(細かさ)を2種類ずつ揃えてあること。
よく見ると、上下2段ずつに分かれており、その中で上段は荒くて濃い色の絵の具、
下段は細かくて淡い色の絵の具になっています。
このようなセレクトでは、同じ色同士の、濃淡の差を楽しめます。
このくらいあると、かなり色々描けそうだな…とはいえ、お値段が張るなぁ…
ですよね。
いきなりセットを買うのは怖い!というときは、
セットの色を参考に、欲しいものだけを単色買いできます。
絵の具さんに行くと、瓶に沢山の色が並んでいるので、
瓶をカウンターに持っていって、「1両ずつ」というと、
ちょうど最小単位の15gずつ測って、袋詰めしてもらえるのです。
(ちなみに、紹介したセットの絵の具は、各色大体15g入りです)
【結局】
ケチな私なら、こんな買い方をするかもしれません。
- ナカガワの赤箱 10,120円
- 天然岩群青の9番 (青系、輝きがきれい)1両 3,960円
- 天然松葉緑青の9番 (緑系、日本画といったらコレ)1両 1,848円
(上記すべてウエマツで、計15,928円。価格は変動するので都度確認ください。)
この辺りで、岩絵の具の感じをつかむ。
描きながら、また必要な絵の具があれば、買い足します。
水干絵の具 【必要度★★★★☆】
まず1枚描くなら、全体に使う下地用に1色だけ買うのもいいですし、
いずれ使うことを考えれば、
何色かのセットを買ってもよいでしょう。
1本400円くらいで、長く使え、
岩絵の具に比べてリーズナブルです。
初めての日本画材② 胡粉 【必要度★★★★★】
和紙に下地を塗る/絵の具の白色として使います。
胡粉を使うときに、乳鉢+乳棒のセットも必要です。
初めての日本画材③ 絵皿 【必要度★★★★★】
上に挙げた絵の具を、絵皿で自分で溶いて使うのが日本画です。
大体10.5cmのものが、4.5枚は必要でしょう。
残った絵の具を取っておくのに、便利なフタも売っているのですね。
通常はフタ無しなので、絵の具を取っておくときはラップを掛けておきますが、
フタの方が繰り返し使えてエコですね!
初めての日本画材④ 墨 【必要度★★★★★】
線を引く/黒色として使います。
私は墨を大量に使う作品をあまり描かないので
いつも少しずつ硯で擦っていますが、
調べてみたら老舗墨屋さんで有名な「古梅園」の墨液がありました。
膠系とあるので、日本画と相性がいいかも。
(そこまでこだわらなくても、もっと少量で買えるものでもいいと思います)
初めての日本画材⑤ 膠 【必要度★★★★★】
絵の具を和紙に定着させるために使います。
膠(にかわ)がないと、日本画の絵の具はサラサラ粉状なので(岩絵の具・水干ともに)
それだけで紙にくっつくことはありません。
本格的には固形のものを自分で溶いて使いますが、
最初はボトル入りのもので大丈夫です。
初めての日本画材⑥ 筆 【必要度★★★★★】
- 彩色(さいしき)筆 … 大きめの面を塗るときに。6号
- 則妙(そくみょう) … 細かい場所を塗るときに。中
- 面相(めんそう)… 線描きに。中
初めての日本画材⑦ 紙 【必要度★★★★★】
- 雲肌麻紙のパネル張りしたもの または
- 麻紙ボード
初心者ならば、このどちらかが使いやすいでしょう。
長期的な保存を考えるなら、パネル張りの方がよいです。
しかしお値段も張りますので、
慣れてきたら、自分でパネルに水張りをしてみましょう。
その他、余裕があれば欲しいもの(代用アイディアも)
上に挙げたものだけで、とりあえず制作は始められるでしょう。
初めのうちは、少しは出費がかかりますね。
しかし、どんな趣味であっても、最初は投資が必要なもの。
日本画は、消耗する絵の具や紙以外の道具は、かなり長く使うことができるので、
損はしないと思います。
絵の具屋さんに行くと、その他にも様々な道具や材料があります。
これはどれくらいの必要度なの?
という疑問にお答えし、
余裕ができたら揃えて欲しい!と思うものをご紹介します。
刷毛(はけ)【必要度★★★★☆】
1本あると、広く塗れるので便利です。一生使えます。
これはほぼマストアイテムでしょう。
下地塗り/広い面積の塗り用に便利です。
水張りだけなら、柔らかなスポンジなどでも出来ますが…
色々な筆 【必要度★★★☆☆】
平筆(準マストアイテム)や、
丸筆の中でも、筆には実に色々な種類があります。
それは、筆の材料・太さ・長さなど色々な要素が関係し
絵の具の含み方や、コシの強さが全く違ってくるからです。
まずは基本の3本(上に紹介したもの…彩色・則妙・面相)を使ってみて、
慣れてきたら別のものもトライしてみる。
その中で自分の気に入ったものを見つけれられるとよいでしょう。
また、日本画筆は岩絵の具のザラザラで穂先が削れてしまうので、
ある程度消耗品となります。
「穂先に1本だけ出ている『命毛』が切れたら買い替え時」 とも言われます。
プロでなければそこまでシビアになる必要はありませんが、
あまりに「先が効かない」…つまり先が摩耗して、
筆先を使った表現ができないもので描いていると、
作品の筆跡がきれいにいきません。
『公房筆を選ばず』という言葉もありますが、
一般的には、よい筆を使うというのは、
上達への近道だと思います。
筆巻き 【必要度★★★☆☆】
筆を使い終わったら、水分をしっかりとふき取って、乾かすのが基本です。
置き方は、平置きにします。
もし筆を濡れたまま、プラスチックケースなどに入れておいてしまえば、
すぐに筆の根元が痛んで(腐ったりカビが生える)
毛が抜けたり、使えなくなってしまうことでしょう。
もし筆を持ち歩くようなことがあれば、
または自宅でも都度道具をしまう必要があるなら、
通気性の良い竹製の筆巻きを使いましょう。
手持ちの、書道のものなどがあれば、もちろんそれで大丈夫です。
墨と硯 【必要度★★★☆☆】
墨を自分で溶きおろす場合に必要です。
左のサイズはとても小さく、私は持ち運び用にしていますが、
自宅で使うなら右くらいのものがあった方がいいでしょう。
墨には大きく分けて2週類あり、
- 油煙墨(ゆえんぼく)=茶墨
- 松煙墨(しょうえんぼく)=青墨
とありますが、最初は油煙墨が使いやすいと言われています。
墨について詳しくはこちら
水差し 【必要度★★☆☆☆】
絵の具を水で溶くときに、
ちょうどいい量だけを絵皿に足すことができます。
しかも、いつもキレイな水です。
筆洗から水を足すようにする場合、
筆を洗った時すぐに筆洗の水が濁ってしまうので、
水換えの頻度が多くなります。
膠鍋(にかわなべ)/ガラス瓶【必要度★★☆☆☆】
固形の膠を自宅で溶くようになれば、あなたも日本画通…
膠は沸騰させてしまうと粘着力がなくなるので、
湯せんをして溶かします。
湯せんには、陶器製の膠鍋か、適当なガラス瓶でもよいのですが、
ガラス瓶は急な温度変化に弱いので
(冷蔵庫から出した、プルプルの膠液を溶かす場合など)
陶器製のほうが安心かもしれません。
絵の具さじ、膠さじ【必要度★☆☆☆☆】
絵の具さじ、これが意外と便利です。
私も実は最近まで使っておらず、
使った時の便利さに驚きました!
日本画の絵の具は、粉状のものを
小さなビニール袋に入れられて買うことが多いですが、
そこから自分の使いたい量を取り出して使います。
袋から直接絵皿にトントンと出すこともできるのですが、
これだと、時々不意にバサッと出てしまって、
不要な分をちびちび袋に戻す(これがやりにくい…汗)
という羽目になります。
絵の具匙があれば、こんなことが無く、とっても快適です。
膠さじ(水さじ)は…膠鍋に絶妙な角度でひっかかり、あれば便利です。
念紙 【必要度★☆☆☆☆】
スケッチや下図を、本紙にトレースするのに使う念紙。
カーボンペーパーの、日本画版のようなものです。
少し大きめの作品(40号~)の場合には、あった方が便利だとは思いますが、
私は小さめの作品の場合には、
下図をコピーし、その裏を鉛筆で塗って使っていますので、
特に必要とも感じません。
また、既成の念紙は、本紙に写したときの色の粉が
絵の具を塗ったときどうなるかも大事です。
(以前に、既製品を使ったら絵の具をはじいて描きにくかった…
今のものは改良されているかも)
前評判を聞くか、自分で買って試してみるほかありません。
また、念紙は水干を使って自作もできます。
ちなみに、一般的に事務用品として売られている「カーボンペーパー」は
油性インクが染みこんでいる紙であり、
日本画とは基本合わないのでやめた方がいいです。
陶器の筆洗 【必要度★☆☆☆☆】
これはぶっちゃけ
お料理用のボウルやバケツ、水彩用のものなど何でもよいですが、
日本画用品に陶器がよくつかわれるのは、
絵の具に金属イオンが混ざらないように
といった目的があるようです。
ですから、熱を加えるニカワの容器などは、ガラスか陶器がよい
と言われます。
本格的な日本画の先生に教わると、
ニカワをふやかしたり、ドーサを作ったりするボウルもホーローのものを使います。
(ホーローの表面はガラス質です)
ですが筆洗程度であれば、どんなものでも構わないと思います。
日本画材リスト・まとめ
ということで、ついつい長くなってしまいましたが、
日本画を始めるにあたり、必要なものリストは以下です。
【必要度★★★★★】
絵の具(岩絵の具)、胡粉、墨、絵皿、膠、筆、紙
【必要度★★★★☆】
絵の具(水干)、刷毛
【必要度★★★☆☆】
筆巻き、色々な筆、墨と硯
【必要度★★☆☆☆】
膠鍋、水差し
【必要度★☆☆☆☆】
絵の具さじ/膠さじ、念紙、陶器の筆洗
初めにも書きましたが、
その人の描き方などにより、
日本画の材料・道具の使い方は変わってきます。
細かいところは教わる先生などによって、違うところもあるでしょう。
しかし、私が一般的に日本画を描く方と関わってきて、
この辺の道具・材料は、ほぼ共通して基本のものだと思います。
一つのガイドになれば幸いです。
日本画材を買えるお店
この記事に載せてある商品は、
横浜に店舗のある「絵具屋三吉」さんのオンラインショップ(価格が赤で表示されている写真)と、
渋谷に店舗のある「ウエマツ」さんのオンラインショップ(価格が黒で表示されている写真)からです。
その他の専門店などについは、
こちらの記事にもありますので、ご参照ください。