イギリスにも、日本のように絵画や彫刻の公募展=competition, open exhibition があります。
自作の作品を応募し、入選すれば会場での展示・販売、入賞すれば賞金がもらえる。また、アーティスト・イン・レジデンスのチャンスを得られたり、特定の場所にペイントしたりなどのコンペティションもあります。
一般に応募できるものの中には、有名な
Royal Academy of Arts(王立美術院) のSummer Exibition(サマーエキシビジョン)や、
団体公募展のようなもの、
また地方在住者限定のものなど種々様々です。
また、イギリスの公募展などを観てみて、日本と大きく違うのは、多くの場合で作品を販売していることです。
この点も含め、応募する場合の注意点についても少し書きます。
日本とイギリスのアート公募展の違い
日本もイギリスも、一般に公募している展覧会は多くあります。
違いといえば、イギリスの公募展は、展示会場で作品を販売することがほとんどだと思います。
また私の印象ですが、日本には○○の会というような、互助的な団体が一般に作品を公募しているものも多いですが、
イギリスにはそのようなタイプは少数派で、
財団などが「○○プライズ」として、大賞に賞金を与えるといった公募展が結構ある気がします。
イギリスにはどんなアート公募展があるか
イギリスでアート公募展について調べたいときは、ネットで
- art open call uk
- painting competition uk
などのキーワードで調べます。数多くの結果が出てくるでしょう。
以下、私なりにイギリスの公募展で一般に応募しやすいものを、分類してみました。
団体公募展の公募展覧会(open exhibition) はモールギャラリーで
日本における団体公募展のようなもの(毎度出品し、入選を重ねると会員、名誉会員だったりになれる)は、
Mall Galleriesモールギャラリーという大きめのギャラリーでの展示がほとんどのよう。https://www.mallgalleries.org.uk/
日本でいう、上野の森美術館とか、都美術館とかのような感じですね。
けど、イギリスには日本のように大小の団体公募展が乱立してはおらず、油絵、水彩画にそれぞれ1つ、2つずつくらいであり、
その多くが、このモールギャラリーでの展示です。
このタイプの展覧会のジャンルは、油画、水彩画の他にも細密画、ボタニカルペインティングなどの団体公募展があります。
例えばこちらの公募展は、私が出品したものです。
Royal Institute of Painters in Water Colours(王立水彩画家協会)
(詳しい出品の仕方はこちらの記事へ)
1807年に起源をみる、イギリスで由緒正しき水彩画の団体といえます。
パトロンに故エリザベス女王、名誉会員に、現国王のチャールズ三世のお名前が。チャールズ三世は実際に水彩画を描かれ、メンバーと一緒に作品を展示されます。
この団体は年間を通じてワークショップやスケッチの会を行っており、年に一度公募展覧会を行います。
これらの公募展覧会の多くは、メンバーと、メンバー外の一般からどちらも作品を選出するということを公示しており、
私も一般として応募して、作品が入選し、モールギャラリーで展示されました。
何度か一般で入選を重ねると、メンバーとしての申し込み資格が得られ、最終的には現メンバーの投票で新メンバーが決まる、といった仕組みのよう。
メンバーになると、展示の際などに名前の後ろにRI という称号のようなものがつきます。
RI公式ホームページ→ http://royalinstituteofpaintersinwatercolours.org/
同様なモールギャラリーでの展覧会に、
- Royal Institute of Oil Painters(王立油画協会)
- The Pastel Society(パステル協会)
- The Society of Women Artists(女性アーティスト協会)
などがあります。
RI(王立美術院)のサマーエキシビション
サマーエキシビジョンは、世界的にも有名な一般公募展覧会です。
RIは、ロンドンの中心部、ピカデリーにある国立美術学校(大学院のみ)。美術館も館内に併設しており、普段は様々な企画展を行っています。
この美術館をいっぱいに使い、サマーエキシビジョンが開催されます。
美術館内には大きな展示部屋がいくつもありますが、その部屋部屋で絵画、彫刻、建築の分野に分かれ、特に絵画は大小の入選作品が壁一面にびっしりと展示されるのが圧巻です。
面白いことには、(イギリスの公募展は他もそうですが)作品はその場で購入できるので、作品のキャプションには値段が示されています。
そして例えば版画だと、複数枚制作が出来るので、売約済シールがキャプションに何枚と並んでいるのを目にすることができます。
このような光景を見ても、イギリスは、人々がずっと気軽にアートを買って自宅に飾る習慣があるのだなと実感させてくれます。
その他のコンペティション
- Jackson’s Painting Prize https://www.jacksonsart.com/paintingprize/
美術用品店のジャクソンが開催する絵画公募展。
入賞作品はロンドン等での実際の展示に参加でき、作品は販売される。入賞はウェブサイトでの展示。
- London Art Biennale http://londonbiennale.co.uk
400 点ほどの作品をを選出。入選作品はチェルシーにあるチェルシー・オールド・タウンホールでの展示、販売。作品サイズは大きめのものが多いよう。
- Trinity Buoy Wharf Drawing Prize http://trinitybuoywharfdrawingprize.drawingprojects.uk
ドローイングに特化した公募展。
上位入賞者の賞金のほか、入選者はイギリス各地での展示など。多くの他の公募展と同じく、外国からの応募も受け付けている。
その他小さなギャラリーなどで募集しているものも含め、多種多様な公募展があります。
応募するなら、自分の作風や目的に合うところを探すとよいでしょう。
イギリス国内から応募するとき
イギリス国内からアートを応募するには、要項をよく読むことが必要です。が、時間がかかってしまうので…
以下は一般的な要項に書いてある内容や、必要な情報です。
応募に必要な用意
- 作品の質の良い写真
- 作品タイトル
- アーティストステートメント
- 作品説明
- 作品サイズ
- 制作年
- 額装の有無
- 作品の値段
要綱に書いてある内容(一般的に)
- 出品料
- 審査日程
- 一次はデジタル審査、二次は実物審査など
- 搬入日時(地方であれば専用業者を利用)
- 落選した場合の搬出日時
- 入選した場合の展示日程、搬出日時
- 作品が売れた場合の、開催者の取り分(3割程度が多い)
などです。それぞれ項目について、また詳しく書きたいと思っています。
外国からの応募するときの注意点
ロンドンで開催される多くの公募展は外国からのエントリーも受け付けていたりします。
ただ外国からの応募には、作品を販売するための登録(VAT、税金を払うためのシステム)を登録する必要があります。
これがどの程度煩雑なものなのか私はトライしたことがないので分かりませんが、インターネットで完結するシステムと思われます。
また、一次審査は写真での審査というものが多いですが、
そこに通ると二次審査は実際に作品を送らないといけません。
そうなると、送料(作品が売れない場合は往復分、専門の業者に依頼をする)や保険などの費用もかかってきます。
ですから、それ相当の出費は覚悟しないとならないでしょう。
公募展に応募するのは労力も要りますが、入選すればメリットも沢山あります。自分に合った方法や展覧会を探してチャレンジしてみましょう!