日本画 歴代の巨匠を5人挙げるなら?
日本画家というと、皆さん誰を思い浮かべるでしょうか。
画家といえばまずゴッホやモネなどの西洋画家
→日本のアートなら北斎
→日本画ってなんだっけ…
となってしまうのが、残念ながら今の多くの日本人の感覚かもしれません。(私も昔はそうでした)
今の私は、「日本画」というジャンルのイメージを多くの人にもってもらいたい!
実は見たことのある作品もあるはず。
といった思いで、日本画のスーパースターを5人挙げてみます。
絵が好きなら、知っておいて損はない画家たちばかりです。
日本の長い歴史の中で5人に絞るというのも、実はとても難しいことですから(個人的好みも入れないと絞り込めません)、
アート好きの方には、ご自身の思い描いた画家が入っていない!といった場合も多々あると思いますが…
日本画とは何か?
まずは「日本画」というと、一般には
「水墨画」のこと?北斎とか?といったイメージを、よくもたれるようです。
しかし今回の記事の中では、
「岩絵の具や墨を使い、和紙に描く作品を多く描く画家」
という分野限定でご紹介します。
例えば北斎や歌麿は、主には浮世絵=版画で有名なので、今回は入れていません。
また、「日本画」という言葉がどうして生まれたかについては、「横山大観」のところを読んでいただくとよいかと思います。
それでは一人目から家
日本画の巨匠① 雪舟(せっしゅう)
室町時代
雪舟は室町時代に生きた禅僧であり、また画家でもありました。
歴史の教科書にも必ず出てくる、とにかく誰もが知っている画家ですね。
雪舟のすごさ
それまでの日本絵画は、平安時代の大和絵風が主流であり、
水墨画はもっぱら、中国の山水画を写すといったものであったようです。
雪舟は禅宗と結びつきの強い水墨画を中国から学び、
さらに日本での写生を積極的に行うことで、独自の画風を確立しました。
その画風は後の美術界にも大きな影響を与えたのです。
日本画の巨匠② 長谷川等伯(はせがわ とうはく)
安土桃山時代
ハデ好きの秀吉が統治する時代、
金銀をふんだんにに使った豪華な襖絵(ふすまえ)や、障壁画(しょうへきが)が多く作られた時代の画家。
この時代のメイン絵師集団、狩野永徳率いる狩野派から独立し、長谷川派をつくります(2代で途絶える)。
長谷川等伯のすごさ
- リッチな材料の使い方(金箔や、盛り上げた絵の具)で、迫力のある画面づくり(楓図)
- 余白の美をいかした傑作をうみ出す(松林図)
緻密に描かれた植物の絵は、同時に装飾的でもあります。(楓図)
こんな襖に囲まれた部屋は、さぞ華やかだったでしょう。
装飾的な絵画、これは安土桃山時代の時代性といえます。
余白の使い方については、
雪舟の時代からの水墨画の、
描かれていない部分に想像をさせる
という方法がいかされています。(松林図)
皆さんはこの竹林から、どのような印象を受けるでしょうか。
この作品、私も一度見たことがありますが、
小さな写真だと割にザックリ描かれてるかのような印象を受けますが、
しかし実際は、意外にもじっくりと丁寧に描かれてるということが、筆遣いから伝わってくるのです。
描く部分、描かない部分といった画面構成を練って描かれた作品です。
日本画の巨匠③ 円山応挙(まるやま おうきょ)
江戸時代後期
京都画壇のスター、
何を描かせても器用にこなすと言われ、
様々なモチーフやの絵や襖絵が残っています。
この作品、私は根津美術館での展覧会で観ることができました(この写真は右半分で、左側にもう一双あります)。
まずは大画面の迫力に圧倒されますが、雪が松にしっとりと積もっていて、朝の光の中で輝いている…そんな静かな印象を与える、堂々たる襖絵です。
兵庫県大乗寺客殿(応挙寺)の襖絵も有名で、いつか見に行きたいです。
円山応挙のすごさ
それまでの、文学を下敷きにした絵画とは違い
写生に重きを置き、
親しみやすい実際の対象を元に描くことで、
武家のみならず町人にも人気の絵師となりました。
大勢の弟子を抱えて制作し、寺院の襖絵なども多く制作しました。
よく比較される伊藤若冲とは違い、当時から今日まで安定した評価を受け続ける画家です。
日本画の巨匠④ 横山大観(よこやま たいかん)
明治〜大正〜昭和
近代の日本画壇を代表する存在。
日本美術院を創設。
水墨画に西洋画の画法を取り入れるなどし、
朦朧体という画風を確立した。
生涯にわたり様々な画風で描きますが、
後年は琳派の研究からの影響もあり、
色鮮やかでデザイン的な富士の絵も有名。
横山大観のすごさ
明治期は、日本が西洋の文化を取り入れて急激に変化していった時代。
日本画不要論(!) なども唱えられる中、
気骨をもって伝統画材による絵画を描き続け、
今でいう「日本画」というジャンルを確立した
と言われています。
そう、日本画とは、西洋画が日本に入ってきた時点で、それまで国内で描かれていた絵画を指すようになった言葉なのですね。
日本画の巨匠⑤ 千住博
平成〜現代
ウォーターフォールのシリーズで有名な、現代の画家です。
東京藝術大学日本画科に学び
ニューヨークを拠点に活動
ベネチアビエンナーレで東洋人初の名誉賞を受賞
など、海外でも高い評価を得ています。
国内では
パブリックアートにも注力しているため、
成田空港第2ターミナル等にある、大きな作品群を観た人もいるのでは。(↓公式ホームページ)
千住博のすごさ
伝統的な日本画画材で描きながら、
モダンな作風や、インスタレーションなど大型作品で、
日本画の魅力を世界に広めている点にあります。
ちなみに私は美術大学に入学する前の予備校にいたときに、
千住さんと同級生の先生に教わっていたので、
その予備校で、千住さんの「ウォーターフォール」制作パフォーマンスを見せていただく事ができました!
大きな画面にダイナミックに、絵の具をエアスプレーで吹き付けていくパフォーマンスは、それまで自分が持っていた、「繊細に描く日本画」のイメージを覆すものでした。
それでいてミニマリスト的な、日本の美を表現しているところが、千住さんの魅力なのかもしれません。
さいごに
はじめに書いたように、沢山の素晴らしい日本画家の中から5人に絞るというのはとても難しいことですし、
もちろん「正解」を書いている訳ではありません。
私の個人的好みも反映されています!
この記事をきっかけに、
興味を持った画家がいれば、ぜひもっと詳しく調べてみてください。
さらに、同時代に彼らのライバルとなる画家達が沢山います。彼らもまた、巨匠といわれる画家ですから、興味を広げて調べていただけたら嬉しいです。