日本画を堪能できる宿
日本画などの日本美術を堪能できる、美術館のような宿に行ってきましたので、書きたいと思います。
日本画の好きな人には、超おすすめです!!
その宿とは、伊豆・三津浜(みとはま)にある、松濤館(しょうとうかん)という旅館です。
明治44年創業、各界の名士、多くの文人墨客が逗留されたとあります。
まずは歴史ある宿らしく、ロケーションが最高です。
遠景に富士を望む小さな湾にあり、客室から眺める青い海、富士見の露天風呂など…美しい日本の景色が純和風の建築とピッタリ合っていて、まずはそこで十分に魅力的な高級旅館です。
しかし、私のおすすめするポイントは、館内至る所に飾られた、日本画の数々。
実はこの宿に宿泊した理由は、
親戚の集まりのためで、
自分で選んだ訳ではありませんでしたし、そのような期待は全くなく訪れたのすが…
実際に館内に足を踏み入れてびっくり!
美術館に行かないとお目にかかれない,近代日本画のスーパースター達の作品が目白押しで、
このような場所に普段縁のない私は、突然のことに驚いてしまいました。
なぜ松濤館のアート作品は他と違うのか
松濤館では、ラウンジなどの公共の場所にも沢山の絵画がありますが、
客室の床の間に飾ってあるものも、もちろん、世界に一点だけの肉筆画。
今までいろいろな旅館やホテルに宿泊してきましたが、
多くの施設に飾ってあるのは版画や写真でした。
版画や写真がダメというわけでは全くありませんが、
これまで日本画を宿でみられるということはほぼ無かったので…(しかも有名作家ばかり!)
版画や写真は量生産ができるので、値段のことを考えるなら、絵よりもずっとお手頃です。
逆に、画家が一枚一枚時間をかけて描く絵画(肉筆画)は、一点ものであるだけに貴重で、値段も桁違いになってきます。
何より、ここでしか絶対に出会えない作品であり、絵の具の厚みや作家の手のゆらぎを感じられる絵画…
それを、宿にいる間中いつでも鑑賞することができる。
これは、かなりの贅沢であると思います。
前置きがずいぶん長くなりましたが、
松濤館に飾られていた絵画の作家を、思い出せるだけ書きます。
全てをメモしてはこなかったので、実際には倍以上の作家の作品と出会えますし、
季節によって作品を入れ替えたりもすると、宿の方がおっしゃっていたので、
その時々で出会える作品も違ってくるのかと思います。
松濤館で出会える作品たち(ごく一部!)
玄関ホール
横山大観(あじさい)
ラウンジ
棟方志功(版画家)
山口蓬春
梅原龍三郎(洋画家。富士の絵など)
梅原龍三郎はこの宿にゆかりがあるといい、「三津浜の富士」という作品もありました。
2,3,4階廊下
松尾敏男
後藤順一
千住博もあったかな?
料亭付近
小倉遊亀(卓上の静物…大好きな小倉遊ぶ亀と会えて嬉しかった♡)
高山辰雄(梅の鉢だったかな?小さな画面にたらしこみ等を使いさらりと描かれていて、
その絵の具の使い方や構図のバランス感がとても魅力的だった…写真を撮るのを忘れてしまった!)
草間弥生(現代美術家)
画廊談話室「悠」
何と画廊談話室というのがあったとは!!どこにあったのでしょう。全く気付かずに帰ってきてしまい、後でホームページで知りました。
何とも残念!!旅館の方も、もっと大々的にお勧めしたらいいのにと思います。
その他の美術作品
館内には絵画だけでなく、陶芸なども飾られています。私はそちらには詳しくないのですが、お好きな方にはたまらないものが多くあるのかも知れません。
なぜ松濤館にはこんなに多くの日本画作品があるのか
フロントの方に聞いてみましたが、これらはオーナーさんの持ち物ということでした。
それ以上のことは分からなかったのですが、
他にも、保管に困るほどのコレクションがあるとのこと。
一つ思い当たるのは東京・渋谷にある「松濤美術館」…
こちらとのつながりがあるのでしょうか。気になるところです。
旅館としての印象
初めにも書きましたが、富士を望むロケーション最高な松濤館、
宿全体としては、「純和風」な外観・内装で、
歴史を感じさせつつも、令和元年のリニューアルなどのためかとても清潔感があり、手入れが行き届いている印象を受けました。
部屋の窓から望める景色もとても贅沢。
天気がよかったので、客室からも、屋上のお風呂からも富士が見えました。
お料理も、一つ一つとても美味しく、量も食べきれないくらい。
このときの器も、鮮やかなものや凝ったデザインのものが多く、目にも楽しい。この食器が、いったいどこのものなのか…気になってしまうような素敵なものが多かったです。お料理が盛り付けられたところももちろん美しい。
周辺観光
すぐ隣に伊豆・三津シーパラダイスがあります。
子供たちはこちらも楽しんでいました。
反対隣の三津浜では海水浴・磯遊びもできるようです。
電車で少し行けば伊豆の観光に便利。
最寄り駅は伊豆箱根鉄道駿豆線の伊豆長岡駅ですが、
この路線にも多くの観光地がありそうです。
私たちは宿泊の翌日は、新幹線と伊豆急行線との乗り継ぎをした三島駅付近を散策して帰ってきました。
三島で有名なのは三島大社とうなぎということで、その二つを満喫。
三島駅付近に「楽寿園」という大きな公園があり、
訪れてみたかったのですがその日は休園日でした。
日本画の宿で思ったこと
美術館とは違い、旅館という場所に絵画が飾られているという状況で、
気張らずに、ごく自然に絵画を観ることができた。
生活の中にある(日常生活ではありませんが、美術館の広い・白いスペースとは違い、和室の部屋や廊下に飾られているという意味で)絵画を見て、
絵画の見え方が自分にとって新鮮であり、また改めて美術の重要性(美は心の栄養である!)が感じられた。
絵をコレクションされているオーナーさんの気持ちも想像しながら… そう、旅館という場所にありますが、これらはプライベートコレクションなので、一般に多くの人が観られるものではないのです。個人蔵になった絵画というのは、そのコレクターさんの気持ち次第なのです。
そんな貴重な絵画たちに逢わせていただき、感謝…の気持ちです。
幾多ある作品たち中で、心にすっと入ってくるものを素直に観、心惹かれるものに純粋に出合いなおせた気がします。
アート好きな方には何倍も楽しめる、とてもとてもおすすめの宿です。