日本画の揉み紙の作り方や、活用方法について
今回は、揉み紙(もみがみ)を使った制作の方法についてです。
揉み紙とは、
和紙を文字通り揉んで、あえてシワをつけ、
その上に絵を描いていく技法です。
これは、紙を構成する繊維の長い、和紙だからこそできる技。
洋紙である画用紙だと、紙の繊維が短いので
すぐに揉んだところに穴が開いてしまったりします。
揉み紙のよさは、
日本画作品にぐっと和の雰囲気が出せたり、
揉み紙のテクスチャーから、作品のイメージを
より豊かにすることもできる
とても面白い技法だと思います。
日本画の世界では特に、
紙に絵の具を2層に塗って、揉むことで、
上の層の絵の具をはがし
下の色が隙間から見える
ということをよく行います。
今回はこのやり方について、実際にやってみた写真とともに
お伝えしたいと思います。
日本画の揉み紙① 【紙について】
揉み紙をつくるのに
おすすめは薄めの和紙。
楮100%の「細川紙」
(埼玉県の小川町近辺の工房が多いため、小川和紙とも呼ばれる)
を、今回は使いました。
厚めの「雲肌麻紙」などでもできますが、
紙が厚いと、揉んだときに絵の具が
はがれにくくなる場合があるので、
細かな模様をはっきり出したい場合には
薄めの紙のほうが
向いているでしょう。
日本画の揉み紙 【作り方①~1度目の塗り~】
まずはじめに、1層目の絵の具を塗り、乾かします。
使う絵の具は、水干絵の具や、墨など
粒子が細かい絵の具です。
日本画の揉み紙 【作り方②~2度目の塗り~】
次に、2層目の絵の具を塗り、乾かす。
胡粉や岩絵の具を使います。
箔でもできます。
ここで、先日揉み紙をしたときの失敗談!
絵の具をしっかり定着させたい思いから、
膠を濃くしすぎた+厚く塗りすぎてしまった
→揉むときに紙が破れてしまった。
絵の具が固く・分厚くなりすぎて
紙に柔軟性がなくなってしまった印象でした。
全体的に分厚く、揉もうとするときに
「バリッ」という感じになっており、
細かめに折り曲げたときに
紙が破れてしまいました…
2層目の絵の具は、膠なしでもいい→
揉んだ後にドーサで定着させる
といわれるくらい。
私は、その後描くときに
絵の具が動いたら嫌なので、
膠は混ぜますが、膠の濃さは気持ち弱め。
また塗り厚も、薄すぎてもうまく模様が出るか不安ですが、
分厚く塗りすぎず…がいいと思います。
日本画の揉み紙 【作り方③ ~揉む~ 】
②が乾いたら、いよいよ紙を揉む。
粉が結構出るので、下に新聞紙を広げたり、
外で作業したりがいいと思います。
揉み方によって
模様の方向性や雰囲気が
変わってくるので、
- 端からくしゃくしゃにしていく
- 部分的に細かく揉む
- 折り筋をつける
など、作品の雰囲気に合わせて
色々試すのも楽しいと思います。
↓和紙やさん「紙の温度」に、揉み模様や色々な色合いの商品があります。
制作の参考になりそうです。
(表具に使う和紙は、上から描くためではないので、表面はドーサでなくふのり加工なのですね。)
日本画の揉み紙 【作り方④ ~ドーサ~ 】
ドーサ液や、「中性サイズ剤」を刷毛で塗り、
絵の具を定着させます。
紙を湿らせると柔軟になるので、
少し引っ張るなどしながら、
シワを伸ばすイメージで
やるといいです。
日本画の揉み紙 【作り方⑤ ~アイロンがけ~ 】
アイロンでシワを伸ばす。
当て布(薄い綿のハンカチや手ぬぐいなど)をして
その上からアイロンをかけます。
この作業により、揉んだシワが平らになり
とっても絵が描きやすくなります。
日本画に熱をかけるのはちょっと怖いですが、
意外にこれが平気なのですね。
日本画の揉み紙 【作り方⑥ ~裏打ち~ 】
揉んだ紙は多少なりともダメージを負っているので
裏打ちをした方がいいです。
裏打ちにおすすめの紙は、薄美濃紙です。
薄美濃紙は、揉み紙以外でも裏打ちや
下絵をトレースする念紙づくりなどにも使える、
便利な紙です。
日本画の揉み紙 【作り方⑦ ~水張りから制作~ 】
パネルに張り込む。
さらに紙がピンと伸びてくれて、
上から自在に絵が描けます。
日本画の揉み紙 【作り方⑧ ~こんなこともできる~ 】
これらは以前に試したものですが、
上記の方法ではなく、和紙にただシワを入れるのも
揉み紙の一つの技法といえそうです。
シャクヤクの、繊細な花びらの質感を表現するため、
作品に取り入れてみました。
またこちらは、揉んではいないので、
揉み紙の技法とはいえないのですが、
薄紙に絵の具→箔を貼ったものを、本紙にのりで貼ってあります。
この薄紙をを揉んでおいて、模様をつくることもできたのではと思います。
箔で揉み紙をつくると、美しいテクスチャーができるので
またトライしたらここに書きたいと思います!