日本の絵画や工芸品には、しばしば金箔が使われているイメージがあると思います。
金箔、銀箔などの箔とは、本物の金や銀を薄く打ち伸ばして定型に切ったものです。
それを絵や様々な材料の表面に貼って、表現や装飾としています。
つまり、伝統的な工芸や日本画などの箔は、本物といえそうです。
しかし、色味など効果のために、金箔の中の金の含有量を変えることはあります。
その意味では、全ての金箔が金100%という訳ではありません。
その中身を、記事で解説しています。
そして、それぞれの箔には、材質や形に応じて名前がついています。
どんな種類があるか、まとめてみました。
★合わせて読みたい★金泥・銀泥の使い方について
絵に使われる箔のいろいろな種類
絵に使われる箔の材質
絵に使われる箔① 金箔
日本の金箔の99%は、石川県の金沢で作られています。他にも滋賀県や、京都産のものもあります。
金箔とは、その名の通り金を薄く打ち延ばして、形を定型に切ったもの。
1万分の1ミリ=0.1ミクロン程度の薄さにまで延ばしてあります。
粒1つの金を、畳1枚の面積にまで延ばすといわれています。
そして、その金箔の中にも実はいくつかの種類があります。
その種類の差とは、金の含有量の差です。
では金以外に何が入っているのか…というと、それは銀や銅が混ざっているということです。
金箔に銀や銅が加わることで、色合いが変わるほか、柔らかく、扱いやすくなるという効果があります。
以下は、金箔の種類によって変わる名前と、金の含有量です。お店では、それぞれの箔のより詳しい成分などが表示されています。
- 純金箔 金99.8〜99.9% 変色しない
- 赤金 金75%
- 青金 金50%
- 水金 金25%
- 洋金箔=真鍮
絵に使われる箔② 銀箔
銀を打ち伸ばした箔。
金箔の10分の1程度の値段で買え、制作にトライしやすい箔です。
1万分の2ミリ=0.2ミクロン程度の薄さ。
銀箔の特徴としては、化学変化を起こして変色するということがあります。
銀箔を作品に貼った後は、ドーサなどで表面を覆い、変色止めをしますが、
それでも年数が経つと、空気中の酸素と反応して黒っぽく変色してしまうのが銀箔です。
そして、この変色する性質をいかした、様々な種類の箔というものもあります。
絵に使われる箔③ 虹彩箔・親和箔(こうさいはく・しんわはく)など
銀箔を化学変化させたり、着色したりして、様々な色合いを出したもの。
赤貝箔(赤色)や、玉虫箔(青色)なども含め、様々な色や種類がある。
絵に使われる箔④ 黒箔(くろはく)
銀箔を焼いて(=硫化させて)、黒色に変化させたもの。
ただでさえ薄い箔だが、科学変化しているため脆く、貼るのが大変だという
絵に使われる箔⑤ その他の金属箔
洋金箔=真鍮
金色に近い。安価で手に入る。
銅箔
緑青系の色に変色させることもできるらしい。屋外の銅像が、緑っぽく変色しているのと同じですね。
白金箔=プラチナ箔
最も高価。金箔の1割増くらいの値段。変色しない。
アルミ箔
安価で手に入る。変色しない。
錫(すず)箔
変色しない。
様々な形の箔
正方形や長方形などに切られた、いろいろな形の箔もあります。截金(きりがね)、切り箔と呼ばれます。
これらの箔は、定型の箔を自分で切ってつくることもできます。
漆などの工芸品にもよく使わるイメージですね。
切り箔
正方形に切られた状態で売られている箔。
サイズが様々ある。
野毛(のげ)
切り箔の種類で、毛のように細く切られた箔。
短冊(たんざく)
切り箔の種類で、短冊状に細長く切られた箔。
砂子(すなご)
これは切箔とは言いませんが、箔の種類ということで…
箔を粉状にしたもの。「切廻し(きりまわし)」と言われる、箔の切り落としを使ってつくることができる。
料紙装飾の世界
もとは平安時代のものが代表的ですが、紙を箔や絵の具で飾り付け、そこにかなの書を書いた作品があります。
この、飾りつけた紙を料紙といい、こういった作品をみると、箔をはじめ、金泥、銀泥、墨などの美しい使い方を見ることができます。
箔を買えるお店
日本画画材店に行けば大抵箔は置いてありますが、ネット通販で買いやすいのは下の2件でしょう。
実際にお店に行くとサンプルを見せてもらえます。
特に、虹彩箔や親和箔の色々な種類は、実際に見ないと色合いや光沢、模様が分かりにくいところもあるかと思います。
色々見るだけでもとても楽しいです。
ウエマツ(渋谷に店舗あり)
絵具屋三吉(横浜・関内に店舗あり)